6号館を作った人たちへのインタビュー
6号館には最新設備を備えた教室や、交流を生み出すための仕掛け、最先端の環境技術など、様々な工夫がふんだんに凝らされています。6号館の建設に携わった人たちは、一体どのような思いを込めてこの建物を作ったのでしょうか。
このページでは、6号館の設計者である株式会社三菱地所設計の古寺浩実さんと、館内の家具類全般をコーディネートした
株式会社 J.フロント建装の佐藤耕太郎さんへのインタビューを通じ、6号館を作った人たちの熱い思いをお伝えします。
<6号館建設に関わったきっかけ>
まずはお二人が6号館の建設に関わるようになったきっかけから教えていただけますか?
古寺:2010年10月に成蹊学園内に「新大学6号館に係るプロジェクト委員会」が立ち上がったときに、社内で設計担当者に選ばれたのがきっかけです。
佐藤:私の場合、建物の建築がある程度進んだ段階でおこなわれた家具のデザインコンペに参加したのがきっかけとなります。
J.フロントの提案は審査した関係者からとても高い評価を得たとうかがっています。
佐藤:まぁ、建物の設計者との相性という問題もあるのですが・・・・・・(笑)。実は、私は成蹊大学に比較的近いところに住んでいて、土地柄も分かっていましたし、プランを作るにあたって何回かキャンパスに足を運んでイメージを膨らませました。高い評価をいただけたとすれば、そんなことも良い方向に働いたのかもしれません。
<設計段階でのキャッチボール>
6号館の建設にあたっては、教職員など実際に建物を使う立場の人間と設計サイドとの間でかなり頻繁に意見交換をしながら細部を詰めていった訳ですが、こういったキャッチボールをしながら建物を作り上げていくといった経験はこれまでありましたでしょうか?
古寺:管財課のように建設を所管する部署の方と密に連絡を取るということはもちろんありましたが、大学の教員や教務部といった色々な部署の方と定期的に話し合いの場をもちながら建築を進めていったというのははじめてでした。最近、学校建築では関係者たちがワークショップなどの手段を通じ意見交換をおこなうことで満足度を高めるといったやり方が増えてきてはいるのですが、今回のプロジェクトで特によかった点は、それぞれの立場の人間が自分たちの実現したいことをぶつけ合う中で、建物全体の進むべき方向性が繰り返し確認されたことだったと思います。
関係者の方々に設計を進める段階毎に様々な意見や要望を伺いながら、 ひとつづつ要素を整理していくプロセスは、非常に地道で長い道のりでした。しかし、利用者の求める建物を作るという意味では重要なことですし、その分、完成したときに多くの人が喜び合えたと感じています。苦労した分、得られたものも大きかったと思います。
佐藤:家具の場合には写真で外見を見るだけでは分からないことも多いので、使う方に実際に触れていただく機会を設けるようにしています。6号館の家具の選定でも関係者の皆さんにメーカーまで足を運んでいただき、実物に触れていただきました。
<建物を作る上での苦労>
建築全体を通じて、特に苦労したことはありますか?
古寺:6号館は全方位を建物に囲まれています。そこで私としては最初、様々な方向から来た人たちが集えるように、建物の内と外がつながっている広場のような建物にしたいと思いました。そのため、1階と2階は何もない開放的な空間にするプランも考えていました。ただ、関係者間の度重なる意見交換の結果、6号館の1階には事務機能を置くことになりましたので、事務機能を盛り込みながら開放的な空間を実現する過程が一番大変だったかもしれません。
佐藤:実は私も最初6号館の図面を見たとき、この建物は正門側とアトリオ、そして4号館方面との接点となる広場のような性格をもつなというイメージをもったのです。今の古寺さんの話をうかがって、やはり相性がよかったのかなと思いました(笑)。
そういった広場のような建物というイメージを実現するために、ラウンジに置く椅子などの家具も、方向性をもたず、思い思いに座れて動かせるものとして、円の要素を多く取り入れました。その中で今回特に難しかったのは、「ふらっとコモンズ」に置かれているベンチです。完全なオリジナルですし、建物の顔になる家具でもありますので、完成したときに皆さんに満足していただけるか、内心ハラハラしていました。
古寺:「ふらっとコモンズ」の家具については、コンペの際に各社とも工夫をこらした提案はしてきたのですが、しっくりこないものが多かったんですね。1階について、私たちは「集まった人の視線や動線をできるだけ遮らないこと」を重視してきました。それを唯一理解し、実現してくれていたのがJ.フロントの提案だったのです。
佐藤:「ふらっとコモンズ」のベンチは大阪の町工場で一から人の手で作ってもらったもので、途中、関係者で2回ほど製作状況を確認しに行きました。1回目に行ったときはこちらのイメージがきちんと実現されているかどうか、正直言って不安な気持ちもあったのですが、現物を見たら素晴らしい出来でびっくりしました。日本の町工場の技術の高さを再認識させられましたね。
<関係者のチームワーク>
全体的に工事は順調だったのでしょうか?
古寺:順調だったのですが、その陰には現場で働く皆さんの並々ならぬ努力がありました。細かい点にまで配慮したより良い建物の実現を目指して、現場の皆さんと意見や知恵を出しあい議論するといった作業を工期中ずっと繰り返していました。
佐藤:私は建築過程全体の中で言えば終盤から参加した訳ですが、管財課をはじめとする関係者の皆さんの「良い建物を作りたい」という熱い思いが半端ではなく、「これは失敗できないな」というプレッシャーというか、使命感を常にもちながらの作業でした(笑)。でも、そういった情熱をもった皆さんに支えられることで、家具の選定も順調に進められたと思います。この方たちとはまた一緒に仕事をしたいと思える良いチームでした。
古寺:本当にそうですね。
6号館のコンセプトは「Commons for Communication」ですが、建設の過程でも関係者の方々の間に良いコミュニケーションが生まれていたのですね。本日は興味深い話をたくさん聞かせていただき、どうもありがとうございました。
左:J.フロント建装の佐藤さん 右:三菱地所設計の古寺さん
工事中の6号館(2013年7月撮影)
完成間近の6号館(2014年3月撮影)
6号館の象徴:ふらっとコモンズのベンチ
会議室の開放的な大窓から見える絶景